アジア人の切除不能な転移性肝細胞癌

2010/08/02

アジア人の切除不能な肝細胞癌(HCC)患者を対象としたフェーズ3試験のサブグループ解析において、転移性のHCCで全生存期間(OS)、奏効率(RR)、病勢コントロール率(DCR)が、ドキソルビシンと比べてFOLFOX4で有意な改善を示した。無増悪生存期間(PFS)は、転移性、肝臓に限局性のHCCともにFOLFOX4で有意に改善した。6月30日から7月3日までスペイン・バルセロナで開催されている第12回世界消化器癌学会で、韓国Yonsei University College of MedicineのJY Cho氏が発表した。  Cho氏らは、中国、台湾、韓国、タイでオープンラベルの多施設共同フェーズ3試験、EACH試験を行い、局所進行性または転移性のHCC患者を対象にFOLFOX4とドキソルビシンを比較している。  FOLFOX4群(184人)では、オキサリプラチン85mg/m2をday1に、ロイコボリン(LV)200mg/m2をday1とday2に、5FUは400mgをボーラス投与、その後600mg/m2を22時間かけて点滴静注でday1、day2に投与した。FOLFOX4は2週毎に繰り返した。一方、ドキソルビシン群(187人)では、50mg/m2をday1に静注し、3週毎に繰り返した。  結果は今年6月の第46回米国臨床腫瘍学会(ASCO2010)で発表され、OSの中央値は、FOLFOX4群6.4カ月、ドキソルビシン群4.97カ月で、有意差は得られなかった(p=0.0695)。  しかし、FOLFOX4群とドキソルビシン群のPFSの中央値は2.93カ月と1.77カ月(p=0.0002)、病勢コントロール率(DCR)は52%と32%(p<0.001)、奏効率(RR)は8%と3%(p=0.0233)で、いずれもFOLFOX4群で有意に改善した。  今回Cho氏らは、EACH試験のベースラインの疾患の状態、すなわちHCCが肝臓に限局性か、転移性かという点から、サブグループ解析を行った。主要目的はFOLFOX4がドキソルビシンと比べてOSを改善するかどうかを評価すること、副次的な目的は2群の有効性と安全性を比較することであった。  FOLFOX4群184人(平均年齢49.5歳)中、限局性は43%、転移性は57%であった。ドキソルビシン群187人(同49.3歳)中、限局性は40%、転移性は60%であった。Child Pugh分類では両群ともAが80%以上であったが、BCLC(Barcelona-Clinic Liver Cancer)のスコアリングではステージCがFOLFOX4群79%、ドキソルビシン群81%となった。  OSの中央値は、転移性のHCCではFOLFOX4群5.7カ月、ドキソルビシン群4.5カ月で有意差を認めた(p=0.028、ハザード比(HR)0.688)が、限局性のHCCでは6.8カ月と6.5カ月で有意差はなかった(p=0.8482)。  PFSの中央値は、転移性のHCCではFOLFOX4群2.8カ月、ドキソルビシン群1.7カ月で有意差を認めた(p=0.0059、HR 0.641)。限局性のHCCではFOLFOX4群3.3カ月、ドキソルビシン群2.2カ月で有意差を認めた(p=0.0119)。HRはそれぞれ0.641、0.644であった。  RRは、転移性のHCCではFOLFOX4群10%、ドキソルビシン群3%で有意差を認めたが(p=0.0322)、限局性のHCCでは6%と3%で有意差はなかった(p=0.4440)。  DCRは、転移性のHCCではFOLFOX4群49%、ドキソルビシン群23%で有意差を認めたが(p<0.0001)、限局性のHCCでは56%と44%で有意差はなかった(p=0.1274)。  毒性については過去のFOLFOX4、ドキソルビシンの毒性と一致し、管理可能な範囲であった。グレード3以上の有害事象の発現の割合は2群間で同様であった。  Cho氏は「FOLFOX4は、アジア人の進行性の転移性HCCに対する有用な全身化学療法の選択肢となりうる」と結んだ。